「2026年」は、介護現場に複数の波が同時に押し寄せる年です。団塊世代が後期高齢者となる「2025年問題」を経て、第9期介護保険事業計画(2024〜2026年度)の最終年度にあたる2026年度には、必要な介護職員が約240万人*¹(2022年度比+約25万人、年6.3万人増)と見込まれています。採用の課題は「人が足りない」に留まらず、常勤・非常勤・スポットの最適配分と、離職抑制を両立する設計力が問われます。 一方、需要面の圧力も続きます。直近統計では、介護サービス受給者数が483.99万人*²(対前年同月+3.4%)、介護予防サービス受給者数が94.17万人(+6.9%)と増勢を確認。「需要は減らない×供給が増やしにくい」というダブルの現実が、2026年の採用現場の難易度をさらに押し上げます。 1. 「2026年問題」とは何か——“高齢化の高止まり局面”に入る2026年は第9期計画の最終年度であり、高齢化の高止まり局面*³に入ります。国立社会保障・人口問題研究所(IPSS)の将来推計人口でも、75歳以上人口のボリュームは2025年前後を境に高位で推移する見通しで、介護・看護の需要圧は中期的に下がりにくい構造です。 需要の質も変化しています。従来広く流布した「2025年に認知症高齢者数約700万人」という見立てに対し、九州大学・二宮班の新推計(厚労省整理資料)では2025年約471.6万人*⁴。絶対数の見直しはあっても有病率は上昇基調で、施設・在宅の双方で看護・介護の質と量が引き続き問われる点は変わりません。 2. データで読む採用リスク——倍率・必要数・需要の三重苦2-1. 倍率:介護サービス職は3.76倍、全国平均は1.22倍(2025年6月)福祉人材センター月次(全社協)では、介護サービス職の有効求人倍率は3.76倍(2025年6月)*⁵。同時期の全国平均は1.22倍*⁵で、介護領域が際立った“売り手市場”であることがわかります。同一エリア・同条件の求人は埋もれやすい前提で、求人票と選考体験の差別化が不可欠です。2-2. 必要数:2026年度に約240万人の介護職員が必要第9期介護保険事業計画の見込み量に基づく集計では、2026年度に介護職員約240万人が必要。2022年度比+約25万人(年6.3万人)という増員規模は、採用・育成・定着・再就業支援を一体で回す運用を前提にしなければ到達しません。2-3. 需要:受給者数の増勢は足元でも継続「介護給付費等実態統計 月報(令和6年6月審査分)」では、介護サービス受給者数 4,839.9千人(+3.4%)/介護予防 941.7千人(+6.9%)。足元の増勢が確認でき、“利用は減らない”現実が続くことを示唆しています。3. 2026年の現場で何が起きるのか——シナリオで読むシナリオA:入所制限の増加看護・介護の配置を満たせず、新規入所の絞り込みに踏み切る施設が増える可能性。特に看護職の夜間体制がボトルネックになりやすく、配置要件(特養は入所者数に応じた看護職員配置が必要*⁷)を満たす運用設計が問われます。 シナリオB:在宅重度化で“点の依頼”が増える訪問系での医療的ケア、オンコール、短時間のラウンドなど、限定業務のスポット需要が増加。これを常勤だけで抱え込むと疲弊→離職の連鎖を招きやすく、業務の切り出し(部分最適)が生死を分けます。さらに特定技能(介護)で訪問系サービスへの従事が解禁(2025年4月21日*⁶)となり、支えるプレイヤー拡大の布石も打たれました。 シナリオC:採用力の地域・事業者間格差が拡大求人倍率が高水準で固定化する中、応募〜内定の速度・透明性・歓迎感といった“選考体験”そのものが競争力になります。スピードと分かりやすさを兼ね備えた事業者に人材が集約する可能性が高まります。4. 採用担当が「いま」やるべき5つのこと4-1. 求人票は仮説検証型で磨く(3点セット)1)職務の具体化:配属(フロア/ユニット)、医療的ケアの頻度、夜勤回数の幅を明記2)時間設計:フルタイムに加え、午前のみ/夕方のみ/オンコールのみ等の短時間・部分業務スロットを併記3)報酬の透明性:基本給・手当・想定年収レンジを合計例で提示し、試用期間中の差も明記——倍率3倍台の市場では「わかりやすさ=応募率」。不確実性を下げた求人ほど速く刺さる設計に。4-2. 選考は“7日間”の勝負にする書類到着から7日以内に面談・見学・条件提示まで到達できる導線を平時から整備。初速(当日返信)と面談設定の柔軟性(早朝・夜・オンライン)が、そのまま採用力に直結します。目安:初回レス当日/24時間以内、一次面談72時間以内、条件提示〜内定1週間以内。4-3. 常勤を“守る”ために、部分業務を切り出す採血、服薬管理、ワクチン接種、オンコール、早朝のバイタルチェック等、看護業務の一部を切り出してスポットNsや短時間Nsでカバー。常勤の業務密度(負荷)を下げ、離職を防ぐのが主眼です。導入のコツ:動線・マニュアル・医行為の範囲・責任分担(指示系統)を1ページに集約再現性:良い体験→リピーター化→繁忙期の穴埋めを計画的に4-4. 外国人材のチャネルを“制度と一緒に”整える特定技能(介護)は2025年4月に訪問系サービス従事が解禁*⁶。受入要件や支援体制、日本語・記録フォーマットの標準化を先に固めると、現場投入のリードタイムを短縮できます。4-5. 「定着」を前提にする採用KPIを応募数→採用数だけでなく、90日定着率/180日定着率まで延長。オンボーディング期の標準教育メニュー(感染防止・事故対応・服薬/ルート管理・記録)や夜勤明けの休息など実務の安心を担保すると、紹介・口コミも増えます。背景の前提:需要は減らない(受給者増勢)/供給は増やしにくい(倍率高位・必要数拡大)——“採って終わり”が通用しない市場です。5. 施設タイプ別:看護体制の“詰まりどころ”を先に解消特別養護老人ホーム(特養)*⁷:入所者数に応じた看護職員配置が必須。日中は回っても夜間・早朝が薄くなりがち。オンコール/早朝ラウンドの外部化(短時間Ns・スポットNs)でボトルネック解消を。老健:在宅復帰支援のため、リハ×看護×介護の連携が鍵。退所前カンファ/退所後フォローへ短時間Nsを挿入し、業務の谷間を埋めて医療安全と家族満足の両立を図る。有料・サ高住:医療的ケアの個別性が高く、イベント・ワクチン・臨時対応など瞬発力が問われる。スポットNsのプールを平時から温め、急な山に備える。6. Bee‑Nsでできること——“常勤を守る採用”へのスイッチ当社が運営しております看護師専門スポットバイトサービス「Bee-Ns」についてご紹介させていただきます。部分業務のピンポイント配置:採血・服薬・オンコール・集団予防接種などを時間×業務で切り出し、Nsをスポット手配即日〜数日先の穴埋め:倍率が高止まりの市場でも、短時間×限定業務はマッチしやすいリピーター化で準内製化:現場満足を高めて翌月・翌期の計画的確保へ常勤化の導線:スポット→短時間→常勤へスライドし、定着率を底上げ目的は「常勤で全部やる」を手放すこと。“守るべき常勤”が本務に集中できる状態をつくることが、2026年の勝ち筋です。7. まとめ——2026年は「採用危機」ではなく「採用進化」の転機現状:求人倍率は介護サービス職3.76倍/全国平均1.22倍、必要職員は2026年度 約240万人、受給者は増勢。意味:採用のやり方そのものを変えないと、事業運営が立ちゆかない。対策:部分業務の切り出し×スポットNs活用×選考の加速×定着の設計。2026年を“危機の年”で終わらせるか、“進化の起点”にできるか。鍵は、常勤の価値を最大化する採用設計にあります。今日から変えられる小さな設計変更が、離職率と入居者満足を同時に動かします。主要出典(本文中で引用)*¹ 第9期計画に基づく介護職員の必要数(2026年度 約240万人、22年度比+25万人):厚生労働省 報道発表(2024/7/12)ー 詳細はこちら*² 第9期の期間(令和6〜8年度):厚生労働省「第9期計画期間…の動向」ー 詳細はこちら*³ 介護サービス受給者数(令和6年6月審査分:介護4,839.9千人+3.4%/予防941.7千人+6.9%):厚労省「介護給付費等実態統計 月報」結果の概要 ー 詳細はこちら*⁴ 求人倍率(2025年6月):介護サービス職3.76倍(全社協 月次/厚労省統計ベース)、全国平均1.22倍(厚労省)ー 詳細はこちら*⁵ 認知症将来推計(2025年 約471.6万人/有病率上昇):九州大学・二宮班(厚労省整理PDF)、内閣府『高齢社会白書』(2024年版)ー 詳細はこちら*⁶ 特定技能(介護)による訪問系従事解禁(特定技能は2025/4/21施行):厚労省「外国人介護人材の訪問系サービスへの従事について」ー 詳細はこちら*⁷ 特養の看護職員配置の根拠:e-Gov法令検索「特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準」ー 詳細はこちら